十色スタッカート



「ああ。ずっと飼いたいと思ってたくらいに」


「……」


日誌を眺めながら、龍司君は昔と変わらない微笑みを見せた。


横顔だったけど、間違いなくあの頃と同じ。
私の知ってる『龍司君』と一致する部分が増えていく。



「…そっか」


「飼いたい願望はあんのに、知識皆無で焦った」


「それで本を…」


「ああ、やっぱり本って役に立つのな」





『やっぱり本って役に立つんだな!』
と、昔の彼が言った言葉。

校庭で遊んでいる時にクラスメイトの1人が派手に転んで怪我をした。

急いで保健室へ行ったのに先生が留守にしてて、迷った挙句にそこにあった本を見ながら自分達で手当てをしてあげたんだ。


戻って来た先生が感心するくらい、処置もバッチリで龍司君は得意げにさっきの台詞を吐いた。





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