十色スタッカート
思い出は時間が経てば経つほど美化されるもので、私の記憶の中の彼もきっと、私に気があったんじゃないかって謎の期待を膨らませた。
なんとも勝手な思い込みだし、彼にすれば傍迷惑な話だ。
でももう、会う事は無いと思ってたが故の思考回路であって、実際に彼と思わしき人が目の前に現れるなんて思ってもみなかったから、今まで膨らませて来た妄想が一気に弾けて跡形もなく消えた。
だってもし、私に気があるなら向こうから話しかけてくる筈だもの。
話しかけるどころか、隣の席の彼はチラリとも私を見ないし、まるで居ない存在かのように私を視界に入れない。
授業中の今も、気だるげに机に頬杖突いて右手でペンを回してる。