失恋覚悟のマイヒーロー
〝一時の気の迷いだから、もう気にしないでね〟



あの日、関係を壊したくなくて。
想像以上に2人で出かけたのが楽しくて、その言葉を言った。

あんなの見栄でしかないのに。



「ついに卒業ね」



東野さんがあたしたちのところにやってくる。



「紫……」



ちらっとあたしに目をやる。



「ふたり、すごく仲良くなったわね。誠吾の部屋で正解だった」



素直に喜んでいるのだろう。
彼は貴女のとことが好きなのに。



「もう時間だから。行くぞ」


「あ、うん」



更科くんのあとについて、バタバタと走るあたし。



「今日、帰る前に告ろうかと思ってさ」


「……え?」


「ここ出たら兄貴といるときしかたぶん会わねぇから」


「……そっか」



結果がわかってるのに言うんだね。
あたしは1度言ったけど、自分でなかったことにしてしまった。



「夕方の飛行機で帰んだろ?」


「受かったらね」


「受かるよ。寂しくなるな」



少しでも、いなくなったあたしを思い出してくれればそれだけで十分。

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