失恋覚悟のマイヒーロー
「もう、せっかくセットしたのに」



今日で最後だから。
せめて最後に可愛い格好でお別れしたくて、朝から頑張った。



「そんなんしなくてもお前可愛いじゃん」


「……っ」



そんな言葉より欲しい言葉があるけど、そんな言葉もらえないのわかってるから。



「卒業式終わったらすぐに空港向かわなきゃなんだよね」


「そうなんだ。俺は地元だから急ぐこともないけど」


「だよね」



この式が終わったら、もう会えなくなる。
最後くらいもう1度言ってもいいかな。



「みなさん、よく頑張りました」



なんて言う校長の話を聞き、正直どうでもよかった。

ちらっと隣の更科くんを見ればふわっとあくびをしている。
そんな彼をみて、あたしもあくび。



「うつってんの」



隣で可笑しそうに笑うキミ。



「これで卒業式を終わります」



そんな司会の挨拶で、解散となるあたしたち。
あたしの手元には、係の人が持ってきた朝出しておいたキャリーバッグ。



「じゃあ、あたし行くね!」


「えらく早いな……」



少し寂しそうな顔をみせる更科くん。



「好きだよ、じゃあね」



あたしはひとつの想いを彼に残して、キャリーバッグを転がして走った。

もう、いいの。
言い逃げになったけど。

さよなら、あたしの恋。
叶わなかったけど、いい恋をしたと思うよ。

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