2度目の初恋も、君とがいい
──それなのに
今日は違った。



「永人、あたしにホワイトデーは?」



屋上のドアを開けた瞬間に聞こえてきた、甘い声。



〝永人〟という名前に、一歩踏み出した足が引き下がる。



「ほらよ」



姿は見えないが間違いなく、永人の声だった。

永人があの子にはお返しをあげる。
当然、あたしよりも最近仲良い女の子だ。

〝仲良いやつにはあげる〟という中に入るのだろう。


あたしの中には
〝あの子〟のチョコは受け取った。
〝あたし〟のチョコは受け取らなかった。

そんな現状が頭を駆けずり回る。



「今日はダメか」



屋上で泣くといういつもの行動を諦めて、そっとドアをしめて背をむける。


もしかしたら、嫌な顔をしてるくせにもうあの子が彼女なのかもしれない。
もしかしたら、あのバレンタインに告白されて永人がOKしたのかもしれない。

だから、あたしのチョコは受け取ってもらえなかったのかもしれない。
自分のことを本当に好きなあたしのチョコは彼女に悪いから。

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