2度目の初恋も、君とがいい
「あ……うん」



投げつけられた雑巾を掴んで、床にしゃがむ。



「俺、あっち側やるから」



いつの間にか倒れてた容器を拾って手に持っていた永人は、テキパキとあたしに指示をしていく。



「ふーん?」



教室の中にいたであろう女の子が、あたしを見下ろす。



「……っ」



なんだか、その人のことを直視することができなくてサッと下を向いてペンキを拭き始める。


雑念を消し去るように。
ペンキと一緒にあたしの芽生えている想いもなくなってしまえばいいのに。



「あんたって、本当に変わらないよね」


「……え?」



見上げてみても、あたしの記憶には残っていない彼女の顔。

だけど〝変わらない〟という言葉は、あたしのことを前から知っていることになる。



「あー、いじめられた過去の記憶捨てちゃった?」



ニッコリ微笑むその顔に自分の手が震えていくのがわかる。



「あの時も今も、イケメンに取り入るのがお上手なようで」



そのまま、あたしの横を通り過ぎていく彼女。

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