極上社長と結婚恋愛
 

「遠方のイベントに参加して花束をもらって、水をあげる暇もなく飛び回ることも多いから」

確かにそれなら、綺麗にラッピングされた花をほどく暇もなく、萎れてしまうのも仕方ない。

「切り花は、手をかけてあげればけっこう長持ちするんですよ。花瓶に生けて水が減った分を足すだけと、毎日水切りして花器も水も清潔にして弱った葉や花を摘んであげてお世話をしたのでは、楽しめる期間が全然違うんです」
「へぇ」
「大切な人からもらった花は、少しでも長持ちさせたくて一生懸命お世話するじゃないですか。それに花を見るたびに、水をかえるたびに、くれた人のことを思い出してしまう」
「あぁ。花をプレゼントすると、代わりに贈った相手の時間を毎日少しだけ占有できるんだ」

納得したように言った直哉さんに、うなずいて微笑む。

「花束は贈った相手に自分を思い出してもらえる、少し傲慢ですごく素敵な贈り物だと思うんです。だから、そんなプレゼントを贈るお手伝いをできるのが嬉しくて」

最後の花束の仕上げを終え、綺麗に結んだリボンをはさみで切り落としながら顔を上げると、直哉さんがじっとこちらを見ていた。


 
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