極上社長と結婚恋愛
「こっちはうちの副社長の緒方」
「少し確認したいことがあって邪魔してる。すぐに帰るから」
緒方さんはぶっきらぼうな口調で言って、すぐに視線を手元のパソコンに戻した。
「いえ、ゆっくりしていってください」
かぶりを振りながら春物のコートを脱ぎ、手を洗ってからキッチンに立つ。
「なにかお茶でもいれますね」
「ありがとう」
視線を上げて微笑んでくれる直哉さんにうなずいて、カップを用意する。
仕事の打ち合わせ中らしいふたりは、ダイニングテーブルの上に置かれたノートパソコンの前で頭を突き合わせていた。
「今のままじゃ光源がたりないんだよな」
「それならスタック投影しかないね」
「スタック投影にするなら、一万ルーメン以上のプロジェクターを倍用意しないといけなくなるぞ。それなら、ホテル側に照明を落とさせる方が話が早い」
「会場がホテルのロビーなんだから、真っ暗にしたら危ないだろ。安全確保が第一だ」
一体なにについて話しているのかさっぱりわからないけれど、普段とは違う真剣な表情の直哉さんをキッチンからのぞきみて、少しドキドキしてしまう。