極上社長と結婚恋愛
「めんどくせぇ……」
低くうなった緒方さんに、直哉さんが譲歩する気はないといようににっこりと笑った。
物腰は柔らかいけど決して譲らない直哉さんの態度に、緒方さんは諦めたようにため息をつく。
「わかった。そのかわり、テスト投影はしっかりさせろよ」
「そこはちゃんと交渉しておくよ」
ちょうど話が一区切りついたタイミングで、お茶を運ぶ。
コーヒーを、と思ったけれどもうとっくに夜なので、カフェインの少ないお茶にした。
鈴蘭のような丸みのある白い磁器の湯呑を出すと、直哉さんが「ありがとう」と笑ってくれた。
緒方さんも小さく頭を下げ、湯呑に手を伸ばす。
大きな手が白い湯呑を掴み、ぐいと飲み干す。呷ったのどが男らしい。
いつも一緒にいる直哉さんは物腰が柔らかく動作が綺麗だから、緒方さんの男らしい粗暴さに思わず目を奪われる。
ぼんやりとしていると、直哉さんに「あずさちゃん」と声をかけられた。
「今日は出かけてたの?」
「はい。今日はお店が定休日だったので、前の花屋で一緒に働いていた友達とごはんを食べてました」