極上社長と結婚恋愛
 

いつの間にこの胸に種がまかれていたんだろう。気づけば恋心は芽を出し、私の中でぐんぐんとこんなに大きく育っていた。

……私、直哉さんにことが好きだ。
想いが口をついて溢れそうになったとき、直哉さんが「あ」と小さくつぶやいた。

「雨が降ってきたね」

その言葉に顔を上げれば、暗い夜空から銀色の雨粒がすっと落ちてきて緑の葉を揺らした。
ちいさな水滴が緑の葉をたたき、さわさわと微かな音をたてる。

火照った頬に冷たい水滴が落ちて、夢が覚めたように急に怖くなった。

直哉さんのことが好きだけど、もしその気持ちを素直に伝えたらどうなるんだろう。
かっこよくて優しくて魅力的な直哉さんが、なんの取柄もない私と付き合ったってすぐに飽きられてしまうに違いない。

そうしたら、こうやって一緒にいられなくなってしまう。優しく微笑んでくれることもなくなってしまうのかもしれない。

手に入れられないさみしさと、失うことの怖さを天秤にかけ、足がすくんだ。

少なくとも、答えをださないうちはこうやって側にいられる。そんなずるい考えが胸をよぎる。
私がうつむいているうちに、雨脚は強くなっていく。

「そろそろ帰ろうか」

闇夜に降る銀色の雨粒を眺めながら優しくそう言ってくれた直哉さんに、私はぎこちなく頷いた。



 
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