極上社長と結婚恋愛
 

「残念だけど、この世の中はすべての人に平等に幸運が訪れるようにはなっていないよね? 頑張れば必ず努力が報われるわけではない」

その問いかけに、私は無言でうなずく。
その間にも季節は移り変わり、天井からは白い雪の結晶が舞い落ちてきた。

「だけど私は、チャンスをつかめるのはそれまで努力し準備を怠らなかった者だけだと思ってる」
「どういう意味ですか?」

私が首をかしげると、いたずらっぽく笑いかけられた。

「憧れだったウエディングの仕事に携われるようになったのは、降ってわいた幸運なんかではなく、あずさちゃんの今までの努力が実を結んだ結果なんだと思うよ」
「……そうなんでしょうか」

そんなふうに、うぬぼれてしまっていいんだろうか。
戸惑いながらうつむくと優しく肩を叩かれた。

「だれだって、新しいことをはじめるのは怖いさ。だけどせっかくの幸運を前に怖がっているだけじゃ、いつまでも成長できない」

温かいけれど厳しい言葉が胸に刺さる。その時、視界を薄い桃色のなにかが横切った。


 
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