極上社長と結婚恋愛
「そう。本当はもっと余裕があったんだけど、前にあずさちゃんとこのホテルの庭を歩いたときに、どうしても挑戦してみたくなったんだ」
「挑戦ですか?」
「外資系のグループの日本初進出のホテルだから、日本人だけではなく海外からの観光客へもアピールしたいって依頼されて、最初はわかりやすいクールジャパンのイメージで作ってたんだけど、クライアントの希望とはいえどこか違うなって思ってたんだよね。あの夜あずさちゃんと雨に打たれながら、日本らしい美しさってこういうことだよなって実感したんだ」
直哉さんの言葉に、ふたりで夜の庭を歩いたことを思い出す。
夜露に濡れた花や、緑の葉を叩く細かな雨。
ひそやかで美しい景色。
「クライアントに提案して映像を作りなおして。大変だったけど、この判断は間違ってなかったんだって満足してる」
充実した表情の直哉さんに、胸が熱くなる。ドキドキして頬が赤くなった私を見て、直哉さんが小さく笑った。
「あずさちゃんとのデートのおかげだね。ありがとう」
そんなことを言われて、慌てて首を横に振る。