極上社長と結婚恋愛
中の水がこぼれ、打ちっぱなしのコンクリートの床に黒いシミを広げていく。
私は恐怖で悲鳴も上げられず、のどの奥が絞められているように苦しくなる。
なんとか息を吸おうと、は、は、と短い呼吸を繰り返しながら、青ざめて工藤さんを見上げた。
大きな手がこちらに伸びてきて、視界が覆われた。
……殴られるかもしれない。
咄嗟にそう思い恐怖で身をすくませると、低い声で怒鳴られた。
「なんだよその態度は! 俺のことを汚いとでも思ってんのかよっ!」
ビリビリと空気を震わせる怒りに、私ののどから言葉にならない細い悲鳴が上がる。
こちらに伸ばした手に、乱暴に髪を掴まれた。
痛みよりも恐怖が勝り、ガクガクと体が震える。
掴んだ髪を容赦なく引っ張られ、床に手をついた。
冷たいコンクリートの床に倒れこむと、工藤さんの足に倒れた花が踏みつけられているのが見えた。
かわいらしいオレンジのガーベラの花が、無残に潰れ花びらが床に散っていた。
恐怖と怒りと悲しみと、感情がぐちゃぐちゃになって涙が込み上げてくる。