極上社長と結婚恋愛
 

コンクリートの床についた手を握りしめた時、床に散らばったガーベラの細長い花びらが微かに揺れた。

思わず顔を上げると、入り口のドアが大きく開かれ狭い店の中に風が吹き込んだ。

見上げた視界に現れたその人は、体格のいい工藤さんを床にねじ伏せる。
容赦なく背中に体重をかけ動きを封じると、工藤さんは低いうめき声を上げた。

その一連の動きがとてもスマートで、状況が把握できずに私は目を瞬かせる。

「直哉さん……」

呆然としたまま現れたその人の名前を呼ぶと、工藤さんを押さえつけながら直哉さんがこちらを見た。

「あずさちゃん、大丈夫!?」

乱れた髪の間から真剣な表情でみつめられ、胸のあたりが締め付けられる。

「さっき警察を呼んだから、もうすぐ来てくれると思う。もう安心して大丈夫だよ」

助けに来てくれたんだ……。

もう大丈夫なんだと思うと、一気に張りつめていた緊張がゆるんだ。
体から力が抜けていく。
ぷつりとそこで意識が途絶えた。



 
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