極上社長と結婚恋愛
 

「俺こそ、ごめん」

どうして直哉さんが謝るんだろうと思いっていると、ぎゅっと引き寄せられた。
瞬きすると、直哉さんの胸に抱きしめられていた。

「怖かっただろ」

その言葉にじわりと涙がこみあげてきて、たくましい胸に顔をうずめて首を左右に振る。

「あずさちゃんから着信があって、電話に出たとたん何かが倒れる音と男の怒鳴り声が聞こえて、驚いた」

苦しいくらい強く私のことを抱きしめながら、直哉さんがぽつりと言う。

工藤さんとお店でふたりきりになったとき、気づかれないようにこっそりスマホで直哉さんにかけた。
私の無言のSOSの電話に直哉さんは気づいてくれた。

「そばにいた秘書の南に警察に通報するように頼んで、会社を飛び出して、あずさちゃんの店に向かってる間、気が気じゃなかった」

私の肩を抱く指が、微かに震えていた。
いつもは柔らかな声が、驚くほど固かった。

直哉さんは怒ってるんだ。
そう思うと申し訳なくなる。



 
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