極上社長と結婚恋愛
店を出ると、あたりはまだうっすらと明るかった。
歩道脇に街路樹として植えられた、大きな手のひらのような葉が茂るプラタナスの木の下を歩きながら、日が長くなってきたことを実感する。
直哉さんとはじめて出会ったのはまだ肌寒い春のはじまりだってけれど、今は梅雨が明け季節は初夏に移り変わっていた。
直哉さんの会社に着き、あいかわらず立派なビルを見上げていると、中から長身の美女が出てきてこちらに会釈した。
直哉さんの秘書の南さんだ。わざわざ入り口まで出迎えにきてくれたんだ。
驚きながら会釈を返すと、「先日は失礼しました」と深く頭を下げられる。
直哉さんと約束をしてここへ来たのに、追い返されてしまったときのことを言ってるんだろうと察して、私は慌てて首を横に振った。
「いえ……」
「南は頭が固いからな。社長の妹を冷たく追い返すってひどいよな」
そう言っておもしろがるような表情をしている背の高い男の人は、副社長の緒方さん。