極上社長と結婚恋愛
番外編
ツツジの丘
『再婚を考えている人がいる』という父からの報告に、二つ返事で了解した。
息子とはいえ、自分はもう年齢的にも社会的にも完全に独立したいい大人だし、離婚して母が出て行ったあと仕事をしながら自分を育ててくれた父には感謝していたから、どんな女性と再婚しようが反対する気なんかなかった。
再婚相手のひとり娘が花屋を経営していると聞いて、少しだけ興味がわいた。
自分よりも年下。
ということは義理の妹になる。
お互い成人してしっかり仕事もしていて、両親が再婚して家族になったとしても、とくに深い関りになるとは思わなかったけれど、『妹』という馴染みのない言葉に、『ひとりっこの自分にもし兄がいたら弟がいたら』なんて他愛のない想像をしていた幼いころの自分を思い出したから。
親父から聞いた店は、会社のすぐそばにあった。
雑居ビルの一階にある、こぢんまりとしたかわいらしい花屋。
通りに面して大きな窓があり、小さな店の中が見渡せる。
会社に向かう途中にわざと少し遠回りをして足を止めた。