極上社長と結婚恋愛
 

ピンクのガーベラに、同系色のスプレーマム。小さく可憐なカスミソウ。
春らしいかわいらしい色合いの花を選びつつ、最後のアクセントにラムズイヤーに手を伸ばす。

全体に白い柔らかい毛が密生したラムズイヤーの銀色の葉は、あざやかな花と合わせると全体のトーンを落ち着かせ、どこか眠たげでメロウな雰囲気になる。

お店でひとり、店頭に並べるためのミニブーケを作っていると、レジカウンターの奥に置いてある電話が鳴った。手を止め受話器を持ち上げる。

「ありがとうございます。フラワーショップ ガーデニアです」

店名を口にすると、電話の向こうから柔らかな声が聞こえてきた。

『観葉植物の配達をお願いしたいんですが』

ざらつきのない滑らかな男の人の声。だけどクセがないわけではなく、耳に吹き込まれると思わず身をすくめたくなるような、甘い声。

ちょうど今作っていたミニブーケのラムズイヤーの葉みたいな、柔らかな声だなと思う。手触りがよくて心地いいのに、少しだけくすぐったい。


 
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