極上社長と結婚恋愛
「こうやって自分のお店を持てたのは、応援してくれる母がいたからです。すごく口うるさくて心配性なのに、自分ひとりで店を開きたいって無謀な私の夢を、一度も反対せずに見守ってくれました」
「……あずさちゃんは、本当にひたむきでいい子だね」
優しい声でそう言われ、顔をあげると直哉さんと視線が絡む。綺麗な二重の瞳が緩やかな弧を描きふわりと笑った。
「晴美さんがあずさちゃんのことを大切に思う気持ちがわかる」
晴美さん、というのは母のことだ。母からなにか言われたのかな、と首をかしげる。
「親父が晴美さんにプロポーズしたとき、『できれば自分の再婚は、娘が結婚して幸せになってからにしたい』って断られたらしいから」
直哉さんの口からさらりと出た言葉に、驚いて目を見開いた。
いつも自分のことよりも娘の私のことを優先してくれた母だけど、まさか再婚まで後回しにしようとしてたなんて。
「過保護な母でお恥ずかしいです」
肩をすぼめた私に、直哉さんは穏やかに首を横に振った。