極上社長と結婚恋愛
「恥ずかしがる必要なんてない、素敵なお母さんだと思うよ。それに、大切な娘を心配する気持ちもすごくわかる」
直哉さんは首を傾げた私に小さく微笑み続ける。
「ずっと後悔していたんだって。前の旦那さんの病気を知った時、もっと早く気づけていたらって」
「お母さんが……?」
「だから、あずさちゃんにひとり暮らしをさせて、もし自分の知らないうちに体調を崩していたら、病気にかかっていたらって、どうしても不安になってしまうんだって」
いつも明るく笑顔だった母の顔を思い出す。前向きでへこたれず、どんな忙しい時でも豪快に笑う母。
基本豪快で楽観的なくせに、昔から私の体調管理には本当に厳しかった。過保護だといってもいいくらいに。
病に倒れ弱っていく父を見守ることが、辛くなかったわけなんてない。
悲しくなかったわけなんてない。
そして愛する人を亡くすことが、こわくなかったわけなんてない。
記憶の中の母がいつも笑顔だったのは、彼女が強いからじゃなかった。いつも必死にふんばり頑張っていてくれたからなんだ。
じわりと目頭が熱くなる。