極上社長と結婚恋愛
お店で打ちっぱなしのコンクリートの床をモップで掃除していると、カランと入り口のドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
店に入ってきたのは三十代の短髪で体格のいい男の人。よくお店に来てくれる、常連の工藤さんだ。
「あ、工藤さん」
「……こんにちは」
私が会釈をすると、うつむきがちに小さな挨拶が返ってくる。
「ドライフラワーの枝、溜まったので持ってきますね」
そう言って立ち上がると、工藤さんは無言でうなずいた。
工藤さんは家で木工の雑貨を作り販売しているクラフト作家さんで、店で売れ残ってしまった桜やライラックなどの木の枝や、アジサイやビバーナムの茎をよく乾燥させたものを引き取ってくれていた。
綺麗に太さの揃った藤や竹よりも、色褪せた風合いで太さにばらつきのあるドライフラワーの蔓や枝を使うほうが、面白みが出るらしい。
「いつもすみません」
小さな声でぽつりと言われ、私は首を横に振る。