極上社長と結婚恋愛
 

「いえ。こちらこそ、引き取ってもらえて助かります。捨てるのはかわいそうなので」

花屋をしているとどうしても売れ残る花が出てしまう。それをただ捨てるのは嫌なので、早めに引き上げドライフラワーに加工するようにしていた。

紅色、桃色、橙、黄色、紫、色ごとにいろんな種類の花びらをガラス瓶に詰めたポプリや、ドライフラワーのリースやブーケ。店頭に並べて売っているドライフラワーを使った手作りの雑貨は、お手頃なのもあってなかなか人気だ。

せっかく咲いた花なんだから、どんな形でも誰かのもとへ届けたい。
いつもそう思っているから、工藤さんが売れ残って使い道のない枝や蔓を引き取ってくれるのは本当にありがたい。

無料で素材を譲るかわりにと、工藤さんはよくお店の棚や陳列台を作ってくれていた。
気を使わなくてもいいですよ、と言ってはいるけれど、タダでもらうのは気が引けるらしい。

無口でぶっきらぼうだけど、とてもやさしくていい人だと思う。

「……これ、お礼です」

そう言って、紙袋を持った大きな手がずいと前に出される。
驚いて瞬きをしていると、工藤さんが無言でもう一度手を突き出す。

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