極上社長と結婚恋愛
 

「小さなころ、家政婦さんとかはいなかったんですか?」
「掃除や洗濯は頼んでたけど、食事は外で食べたり買ってきたりどうにでもなるし」
「栄養が偏っちゃいますよ」
「一応、サプリとかスムージーで、気を使ってたつもりだけど」

味もそっけもない答えに、思わず顔をしかめる。
合理的だけど、それだけじゃきっと人間は満たされない。温かい食卓を誰かと囲んだり、青い空を見上げたり、部屋に花を生けたり。
そういうささやかな安らぎって、大切だと思う。

「離婚されたお母さんって、どんな人だったんですか?」

母から直哉さんが中学生の頃に離婚したという話は聞いていたけど、どんな人だったのかまでは知らなくて、ためらいがちに聞いてみる。

すると直哉さんは私の質問に小さく笑って答えてくれた。

「悪い人ではないんだけど、自分がいつも中心にいないと気が済まないお姫様タイプだったんだよね。親父は仕事で忙しいし、俺が中学に入って部活や遊びで家にいる時間が少なくなると、自分は相手にされてないんだって不満が爆発して、若い恋人を作って出ていった」

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