極上社長と結婚恋愛
 

切り花の市場は月水金、週三回開かれる。


私の店は小さく、仕入れる量も少ないから、市場でセリに参加するのではなく仲卸の業者さんに注文して花を配達してもらっている。

仕入れのある日の午前中は、花の下準備で大忙しだ。

新聞紙で包まれた草花を解き、それぞれあった方法で水揚げしていく。
くたりと力を無くした花たちが、自分の手で生気を取り戻し生き生きとしていく様子を見るのはとても楽しい。
大変だけど、大好きな作業だ。

店の奥で、仕入れた花を店頭に並べる下準備をしていると、カランとドアベルが鳴った。

「いらっしゃいませ」

顔を上げると、背の高い男の人。その輪郭だけでも、すぐに誰かわかってしまう。

「直哉さん!」

こんな早い時間にお店に顔を出してくれるなんて珍しい。
どうしたんだろうと思っていると、直哉さんがポケットから見慣れたスマホを取り出して小さく振って見せた。

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