極上社長と結婚恋愛
 

「忘れものだよ」
「あ! すみません!」

部屋にスマホを忘れてしまったのをわざわざ届けにきてくれたらしい。

「会社に行く途中だから、気にしなくていいよ。すごい花だね」

頭を下げた私に首を振り、直哉さんが仕入れたばかりの花で溢れた作業台や床を見下ろして笑う。

「今、お店に出すために水揚げをしていたんです」
「水揚げ?」

首を傾げた直哉さんに、手を動かしながら頷く。

「出荷された切り花は、農家さんで切り取られた時点で眠っている状態なんです。それをいっぱい水を吸い上げて綺麗に咲いてくれるように、ひとつひとつのお花にあった方法で声をかけて起こしていくんですよ」

茎の中の導管を傷つけないように丁寧にバラのとげをナイフで落とす作業を見ながら、直哉さんが相槌を打つ。


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