極上社長と結婚恋愛
ナイフを持ち直し、平静を装って作業を再開すると、直哉さんが首をかしげた。
「あずさちゃんが俺を刺すの?」
「私は刺しませんけど」
「じゃあ大丈夫。ちゃんと言う相手は選んでるから」
にこりと笑われ、『ちっとも大丈夫じゃない』と心の中で文句を言う。
今まさにここに、勘違いしてしまいそうになってる女がひとりいるっていうのに。
鼻にしわを寄せて直哉さんを睨むと、彼は楽しそうに笑った。
「それにしても、この店は外から中が丸見えだね。通りから、あずさちゃんの姿がずっと見える。ちょっと不用心じゃない?」
カウンターにもたれながら、直哉さんが窓の外を見て言う。
通りに面した大きな窓からは、外の景色がよく見える。
道行く人や車はもちろん、道路を挟んだ向こう側に立つ喫茶店の店内まで。
「丸見えって。花屋さんなんですから、お店の中のお花が見えないとお客さんが来てくれませんよ」
「それはそうだけど。防犯カメラはつけてないの?」
きょとんとしながらうなずく私を、直哉さんが見下ろす。