極上社長と結婚恋愛
「怖い秘書から呼び出しがかかった」
視線をあげるといつの間にか通りに面した大きな窓の外に、直哉さんの秘書の女性が立っていた。
セミロングの黒髪が印象的な、長身の美女。
「すみません。お仕事前なのに、忘れ物を届けてもらっちゃって」
慌てて頭を下げた私に、直哉さんは優しく微笑んでくれる。
「こっちこそ長居してごめんね」
ふるふると首を横に振ると、大きな手が一瞬私の髪に触れた。
するりと丸い頭をなぞった指が一瞬だけ耳の後ろに触れた。
柔らかな肌に触れた温かい体温に、ぴくりと飛び上がると優しく笑ってくれた。
スマホをコートのポケットにしまい、母に挨拶をして店を出る。
そのスマートな仕草を思わず目で追う。
なにか思わせぶりなことを言われたわけでもないのに、胸がドキドキしてしまう。
店から出てきた直哉さんに、待っていた秘書が歩み寄りなにか話していた。
スタイルのいい直哉さんと、長身の美女。
絵になるふたりを眺めていると、窓ガラス越しに秘書の女性と目が合った。
黒い綺麗な瞳が、観察するようにじっとこちらを見る。