極上社長と結婚恋愛
 

「お母さん、すごく綺麗だよ」

感極まった表情の母に、思わず私まで鼻の奥がつんと痛くなってしまう。

でもここで私が泣いたら、せっかく綺麗にメイクしてもらった母まで泣かせてしまう、と必死にこらえて笑っていると、コツコツと扉がノックされた。

「花嫁を迎えに来たんだけど、入っても大丈夫かい?」

冗談交じりの声に「どうぞ」と答えると、アイボリーの上品なタキシードを着たお義父さんが入ってきた。

ベージュのベストにグレーのタイ。まるで外国人の俳優さんみたいなダンディーな装いなのに、六十を過ぎてもたくましく背が高いお義父さんは嫌味なく着こなしていた。

ウエディングドレスを着た母を見て、お義父さんが目じりを下げる。

「花嫁が綺麗すぎて、息をするのを忘れそうだ」
「もう。そう言う和昭さんも素敵よ」

仲良さげにそんなやりとりをするふたりは、本当に幸せそうでほほえましい。



 
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