cafe レイン
『はい、コーヒーが好きなのでコーヒーを味わってほしいのはもちろんなんですが、日替わりランチをぜひ食べて欲しいですね』
『日替わりランチ! 本日はご用意してもらいました。わ、すごく美味しそう。こだわりとかあるんですか』
『そうですね。食材によって全粒粉パン使ったり、女性のお客様が多いのでそういうのは気にしています。あ、でも男性が食べても満足するようにボリュームもありますよ』
『本当だ、カロリーとか食材とか気にする女性には嬉しいですね。野菜もたくさん入っているし。早速いただきます。……ん! 美味しい!』
『そう言ってもらえてよかったです』
『実は今日、月曜日から始まる新メニューを特別に用意してもらったんですよ』
そうレポーターが言うと、丸山さんがカウンターからお皿を出して見せる。
それは過去に試食させてもらった小野寺スペシャルだった。
『わ~、彩り可愛くて写真映えそうですね。これを作ったきっかけがあるんですよね』
『はい。全員ではないと思うんですが、女性のお客様って甘いもの好きな方多いと思うんですよ。いつものランチにちょっとプラスして頼めるように小さめサイズで作りました。これを作ろうと思ったのは常連のお客様に喜んでもらいたかったからですね。いつもすごく美味しそうに食べるんで嬉しくて』
『私も通いそうですよ。それではこれもいただきますね』
またレポーターは美味しい!と大げさにリアクションを取っていた。それから話は丸山さんへと移る。
『こんなにオーナーさんがカッコよかったら連絡先、聞かれたりとかってあるんじゃないですか』
その質問に一瞬だけ丸山さんの顔が曇った。すぐに笑顔になったから気付かない人もいそうだ。
『まあ……、でも俺マメじゃないんで。すぐに飽きられちゃいます。あ、俺よりコーヒーとランチ目当てに来てください』
言いながら丸山さんはカメラ目線で手を振る。
『あはは、そうですね。美味しいのでぜひ味わって欲しいですね』
それからすぐに別のカフェへと話が移った。時間にして五分ぐらいだっただろうか。あっという間だった。
白いリネンシャツに、ベージュのパンツ。モスグリーンのエプロン。その胸元にcafeレインと書いてある。
黒ぶちのメガネから覗く、二重瞼でアーモンド型した目。
いつもの、丸山さんだった。