cafe レイン
「実は。私がここに来なくなった日の前日から丸山さんの連絡を拒否していました」
「……っ」
私の言葉にショックを受けたのか、言葉をなくす丸山さんに胸が痛む。だけど、私がしてしまったことだ。
頭を下げ、私は改めて謝罪をする。
「ごめんなさい。あの、私花さんに嫉妬していました」
「は。花?」
どうしてそこでその名前が出るのかわからないようで、丸山さんの眉間の皺が深くなる。
「私、丸山さんが花さんのこと、好きなんだって思っていました」
「俺が? 花を?」
訝しげな顔をする丸山さんにいたたまれない気持ちになりながらも、私は自分の気持ちを伝えるために続けた。
「はい。花さんと幼馴染とは聞いていましたが親しいのはわかっていたし、それにレインの名前って花さんから取ったんですよね」
「は。いや、ちょっと待って待って。どういうこと。どうしてそうなってるの。レインが花の名前からとったって何」
混乱しているのか、丸山さんは顔を手で覆っている。
「花さんから聞きました」
「え、花から? なんて」
顔を手で覆ったまま、目線だけを私に向ける丸山さんが尋ねた。だから、私は花さんに言われたことをそのまま伝える。すると、丸山さんは険しい顔をしたままカウンターに置いていたケイタイを持ち上げるとどこかへと電話をかけ始めた。
突然の行動に今度は私が驚く番だ。
どうやら相手が出たらしく、丸山さんは低い声を出した。