cafe レイン

「小野寺さん、ごめん。中に入ってて。家近いから送ってくる」

「わかりました」

私は鍵とスーパーの袋を受け取ると、微笑む。それに安心したように丸山さんは笑うと、花さんを引っ張っていく。
二人の姿が見えなくなってから、私ははあっと溜め息を吐いた。

花さんの不安がっていた気持ちはもしかしたら、他人事ではないかもしれない。
私だって勝手に諦めようとしていたのだから。

言葉にしないとわからない。
それはどれだけ長く付き合っていたって、関係ない。

鍵を開けて中へと入る。前来た時と変わらない。リビングに入ると電気を点けた。
スーパーの袋の中から食材をキッチンにある冷蔵庫に入れる。勝手に開けてごめんなさいと心の中で謝罪をしながら。

入れ終わった後、私はまた溜め息をつき、テーブルの前に座った。
私は本棚にあったコーヒーについての本をとるとパラパラとめくる。付箋が貼ってあったりしていて、勉強していたのだと感じた。時間にしたら十分ぐらいだったと思う。ガチャっと音がして扉が開き、ダダダっとこちらまで走ってくる音がした。
部屋の中にいる私を見つけると、はあああっとその場に崩れ落ちた。
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