cafe レイン

「本当におめでとうございます、凄いです」

沖くんはさすがに抱き着くことはできないので、笑顔で祝福してくれる。

「沖くんのおかげだよ、ありがとう」

「いえ、最初から言っていますが俺はきっかけを作っただけです。何もしてないんです」

「でも、沖くんが勇気をくれたからだよ」

「……そういうことにしておきます」

ちょっと顔を逸らして頬をかく沖くんに、すかさず律ちゃんが「沖、照れてる」なんてツッコミを入れる。

「まじで大石さんうるさいです」

って、沖くんが仏頂面で吐き捨てた。

その時始業ベルが鳴り、私達は近々飲みに行くことを約束して仕事を開始した。
午前の仕事が終わり昼休憩になった私は、cafe レインに行こうかと考えたが昨日の混雑っぷりを考えるとやめた方がいいかなと考え直した。

適当にコンビニでご飯を買って、職場の休憩スペースで食べることにした。
一度ちらっとお店を覗いたが、昨日以上の行列で行かなくてよかったと心の底から思った。
袋の中からおにぎりを取り出し手に持つと、一口食べる。反対の手にはケイタイを持ち、丸山さんへとラインを入れる。

【お疲れ様です。忙しそうだったので、お店に行くのはやめました。顔、見たかったです】

そこまで打って、少し悩んでから私はえいっと送信ボタンを押した。すぐに既読にならないことにホッとしつつ、私はドキドキしながらまたおにぎりを頬張る。
すると、前から来て私の後ろの席に座った女子二人組が大きな声で会話を始めた。

「あのcafe レインのオーナーまじイケメンだね」

急に丸山さんの話が聞こえて、おにぎりが喉につまりそうだった。咽そうになりながらお茶で流し込む。そんな様子の私に気付かない二人は会話を続ける。


< 126 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop