cafe レイン
【仕事終わったら会社の前で待ってる】
一度、着信が来ていたけど、出れないってわかるとすぐにそうメッセージが入っていた。
私は慌てて帰り支度をすると、ダッシュで外へと向かった。会社の外に出て周りをキョロキョロと見渡す。
すぐにどこにいるのかわかった。
ふわふわした髪の毛。いつものエプロンの代わりにレザージャケットとデニム。白いニット。首元から覗く薄いブルーのシャツ。
その前にいる女の人。
彼は女の人二人に話しかけられていた。彼は愛想よく笑っている。
「仕事終わりなんですか~」
「はい、そうです」
「また行きますね。土日とかって空いてますか~」
「土曜日は空いていますね」
にっこりと受け答えをする丸山さん。冷静に見たら営業スマイルだってわかるのに。私の気持ちは沈んでいく。
声をかけられずに立ち尽くしていると、丸山さんが私に気付き手を上げ
「楓!」
と呼んだ。
ハッとして顔を上げる私。丸山さんは二人組に断ると、私の元へと走り寄った。
「お疲れ様。行こう」
「……はい」
私の手を取って歩き始めた。丸山さんの手はすごく冷くて驚く。もしかしたら結構な時間待っていたのかもしれない。
彼の大きな手をぎゅうっと握り返すと、丸山さんも返すように握り返した。