cafe レイン
マンションに着いて、エレベーターに乗り込むと沈黙が私達を包む。
機械の音が響く。私の手はしっかりと握られたまま。
三階に到着すると、丸山さんの部屋まで真っ直ぐに向かう。鍵を開けて中に入り、リビングに向かうと丸山さんがぐるっと私の方に向き直った。
「ごめん。愛想悪かったでしょ、俺」
「……」
黙って私は丸山さんを見つめた。彼に怒っている様子はない。丸山さんは私の両頬を大きな手で包む。
「あまりにも可愛いこと言うから。あのままだったら我慢、出来そうになかった」
「え」
「嫉妬したって可愛すぎんだろ。反則」
そう言うと、ぐいっと顔を持ち上げて私の唇に自分の唇を押し当てた。それから、はむっと私の下唇を唇で挟む。
「っ!?」
それはすぐに離されたけど、びっくりして彼の洋服をぎゅっと掴んだ。
「ずっと楓のこと、抱き締めたくてその衝動抑えてた。でも、楓の職場の近くだし。はあ~、楓が不安そうに俺のこと見てんのわかってたんだけど」
「……ふ、ふふ」
言い訳を矢継ぎ早に口にする彼に、笑いがこみ上げてきて私は声を出して笑った。
「こら。笑いすぎ」
コツンと私の頭に彼のゲンコツが当たる。恥ずかしそうに目を逸らしている彼に口角が上がっていく。