cafe レイン

カランっと鐘の音がして扉が開く。

「あ、もう閉まって……って、楓!?」

お客さんと勘違いしたのか、私だとわかると丸山さんがびっくりした声を出した。

「え、家で待ってるって」

「来ちゃいました」

へへっと肩をすくめる私に丸山さんが「仕方ねえなあ」って苦笑する。
店内にはもう一人いた。バイトの男の子だろう。
黒髪短髪で、切れ長の瞳。
身長が高くすらっとしている。白いシャツにモスグリーンのエプロン。クラッシュデニムを履いていた。右耳にはシルバーのピアス。
確かにカッコイイかもしれない。人気も頷ける。

「ちわっす」

ぺこりと頭を下げる彼に「こんばんは」と返した。彼がすぐに丸山さんの方を見ると、ニヤリと笑って。

「まるさんの彼女っすか」

と尋ねた。

「そうだけど」

むすっとしながら答える丸山さんから私に視線を移した彼が

「へえ~。可愛いっすね」

と、淡々と言った。
突然そんなことを言われて、驚く私。私以上に動揺しているのは丸山さんだった。


「おま、見んな。狙ったら即バイト解雇な」

「は。それ罰せられますよ」

「知らん。オーナーは俺だ」

「横暴すぎる」

そんなやり取りをしている二人。仲が良くてホッとした。二人を見ていると、まるで律ちゃんと沖くんのようで私はクスクスと笑っていた。
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