cafe レイン

「丸山さんがやったんじゃないですか」

「せっかくサプライズでケーキ買って帰ろうと思っていたのにな~。仕方ない。一緒に取りに行くか」

「そうなんですか?」

「そう。予約したから行こう」

「はい! 楽しみです」

「すぐ終わらせるわ」


そう言うと、丸山さんはテキパキと片付けを終わらせた。
店を出ると北風がびゅうっと吹いて、体を小さくしながら自分の腕をさする。

「ほら」

丸山さんが左手を差し出す。それに私は笑顔で右手を出すとぎゅうっと指を絡める。それから自分のポケットに突っ込んだ。
それから丸山さんについて行き、案内されたケーキ屋さんを見て驚いた。

予約開始と同時に注文が殺到して受付が終了してしまった人気パティシエが作るクリスマスケーキのお店だったからだ。

「取れたんですか!?」

「ん~まあ」

なんとも煮え切らない答え。扉には本日ケーキは全て完売。予約者のみと書いてある。さすがだと思った。
私が感心していると、彼は扉を開けて店内へと入った。

「いらっしゃいませ」の声がした後、すぐに「拓!」と声がした。

「おー。久しぶり。洋平。元気してた?」

そこに立っていたのは人気パティシエの木崎洋平さんだ。雑誌で見たことある。え、丸山さん、知り合いなの。

「まあ、ぼちぼち。予約のやつな。ちょい待ち」

「おう、さんきゅ」

軽く会話をすると木崎さんは厨房へと入っていく。それから一つの箱を持ってきた。
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