cafe レイン
「えっ、小野寺さんの恋バナですか?」
目を真ん丸にして沖くんが尋ねる。何故か物凄く驚いているみたいだ。
「沖くん、聞いても面白くないよ」
私が苦笑しながらそう答えると、彼は首をぶんぶんっと振った。
「知りたいです。聞きたいです。小野寺さんの恋バナ」
「だって。さ、酔いが足りないって言うならもっと飲めばいい」
そうやって、律ちゃんは私を横目で煽ってくる。
じっと沖くんにも見つめられ、私は溜め息をつくと観念するように話し出した。
「沖くんは知らないだろうから最初から話すね。
ほら、最近私通っている場所あるじゃない?」
「ああ、物凄く美味しいと評判のカフェですか」
問いかけるように話すと、沖くんは何かを納得したように頷いた。
「そうそう。そこのオーナーを好きになってしまってね」
「え。そのオーナーは知り合いとかだったんですか?」
「ううん。知らないよ。通っていくうちに好きになってしまったというか」
「どんな人かも知らないのにですか?」
「うん。知らない。話したこともないからね」
ぐいぐいと質問してくる沖くん。私はそれに丁寧に答えていく。