cafe レイン
丸山さんの部屋に入り、早速料理を机いっぱいに広げた。
普段は缶ビールや、チューハイだけど今日はシャンパン。
丸山さんが栓を抜きグラスに注いでくれた。自分の分も入れるとグラスを手にして私の方へと伸ばす。
「カンパイ」
それに私も返すと丸山さんがグラスを私のグラスへと軽く合わせる。優しく微笑んでいる丸山さんが好きだって思った。
「美味しそうですね。迷っちゃいます」
「食べ過ぎたらケーキ食えなくなるぞ」
「はっ、そうでした。腹八分目で止めておかないと」
そう言いながらも私はチキンを手にしてかぶりつく。呆れたように笑う丸山さん。
「ははっ、明日食べてもいいし無理して食べなくてもいいからな」
「ん! このチキン美味しいです!」
「どれどれ。……本当だ、美味いな」
「でしょう」
反応が上々だったことに満足しながら頷く私。
「なんで楓が作ったみたいになってんだよ」
「へへ」
それから一通り食べた後、タッパに入れて冷蔵庫にしまった。代わりにケーキを取り出すと机の上に置いた。
中を開けた私は真っ先にプレートに書かれてあった文字に目が行く。
【Merry Christmas
愛しい君へ】
「……」
声が出なくてぼうっとしていると丸山さんが横から覗き込む。そして、プレートを見ると「あいつ」と呟いた。
「……嬉しいです」
「……大事な彼女のためにって言ったからきっと勝手に書いたんだと思う。でも、間違ってはないから」
「はい」
シンプルなザッハトルテ。装飾品のようにフルーツが飾られている。
「本当にありがとうございます。勿体なくて食べたくないな……」
さっきまであんなに食べたいって思っていたのに、丸山さんが私のために用意してくれたと思ったら食べるのが惜しく感じる。
「明日に取っておく?」
「それは……、やっぱり嫌です。でも少しにしておきます」
「俺が我慢できるまでに食べて欲しいな」
「え」
「楓を抱きたくて結構限界」
「っ⁉ もう丸山さん!」
真っ赤になりながら口を尖らせて丸山さんに言うと、彼は「結構待った方だから」と言いながらちゅっと唇を重ねる。
その不意打ちのキスにさらに私が真っ赤になったのは言うまでもない。