cafe レイン

「え、雨?」

「まじだ。屋根あるところに行こう」

頷き、私と丸山さんは近くにあった飲食店の中へと入る。ちょうどいいから少しここで休もうかと私と丸山さんはホットコーヒーを二つ頼んで、丸いテーブルの二人席に腰かける。

「雨、結構降ってきちゃいましたね」

窓ガラスから外を見るとざーっと雨が降っている。

「通り雨だとは思うけど」

「雨で思い出したんですけど丸山さん、一つ聞いてもいいですか?」

「何?」

私と丸山さんからしたら雨は切っても切れない。

「cafe レインの由来ってなんなんですか」

あの日、花さんに名字からとったわけじゃないと言っていた。それから聞くタイミングを逃していたのだ。
思ってもみない質問だったのか、丸山さんは目をぱちくりとさせる。

「あー、雨ってさ」

私は丸山さんの顔から視線を逸らさずに、ホットコーヒーのカップを両手で包む。じんわりと手が温まる。

「ほら、少し憂鬱な気持ちにさせるじゃん? 濡れるし、ジメジメするし。女の人だったら髪の毛セットうまくいっても崩れちゃうし。外歩いていたら泥が跳ねて裾が汚れたりしたりしてさ。そんなちょっとした憂鬱になる日の拠り所になればいいなって思ったんだよね。少し気分が落ち込んだ日に俺の店に来て、元気になってもらえたら嬉しいなって、そんな意味合いを込めてつけたんだ」

少し恥ずかしそうに、だけどしっかりとそう言う丸山さん。
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