cafe レイン
「私はそうでしたよ」

「え」

彼を真っ直ぐに見つめて、私はお店に通った日々を思い出す。

「仕事で失敗した日とか、レインで美味しいサンドウィッチを食べたらパワーもらえて午後も頑張るかってなってました」

「……楓」

「丸山さんのお店に通っている人は皆笑顔でした」

「……ほんっと、楓には敵わない。どれだけ俺を喜ばせるの」

「本心です」

「もう、俺のことどうするの」

参ったというように顔面を片手で覆う。指の隙間からちらりとこちらを見るから、私ははっきりと口にする。

「私に夢中になればいいなって思って」

「もう十分夢中なのにこれ以上?」

「はい。そうです」

「……とんでもないな」


彼はははっと笑って肩をすくめた後、少し俯いてからぽつりと「楓」と呟く。首を傾げる私を彼が見据える。


それから、甘く、優しい声で。


「――――――愛しているよ」


そう言った。


これから喧嘩もするかもしれない。
泣きたくなる日もあるかもしれない。
だけど、そのままにせずちゃんと彼に伝えよう。


私も愛している、と。



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