cafe レイン
「じゃあ、俺もそれでお願いします。コーヒーとか俺、よくわかんないんですけど、甘くしてください」
「苦いの苦手なら、オレンジジュースとかもありますよ。紅茶とかもありますし」
「あ、じゃあ俺ジュースで」
「かしこまりました」
そう言って、伝票にさらさらっとなにかを書いてから私と沖くんの注文した品を作り始める。
ピッチャーに入ったオレンジジュースを、氷を入れたグラスに注ぐ。それから沖くんの前にコースターを用意し、ストローと一緒に置いた。
コーヒーもカップに注ぐと、ミルクとグラニュー糖が入った白い陶器と共に目の前に置かれた。
コーヒーのいい香り。ミルクとグラニュー糖を慣れた手つきで入れると、ティースプーンでかき混ぜる。
それから一口飲むと、私は笑みを零した。
「はあ、落ち着く」
「コーヒー飲めるって大人ですよねえ。俺、おこちゃま舌で」
「そうかな。私、オレンジジュースも好きだよ」
「やっぱり朝にブラックコーヒーとか飲みたいですよ、大人の男としては。
どうなんですか、カフェのオーナーしてるぐらいだからやっぱりオーナーもブラック派ですか?」
ぐいぐいとオーナーに話しかける沖くん。
オーナーはサンドウィッチを作りながら、「そうですね、やっぱ味が一番感じられるので」と答えた。
「そんなことしたら、俺一日舌麻痺してそう」
「はは、でも俺だってカフェオレとか飲みますよ。甘いのが無理なわけじゃないです」
「へえ。ブラック飲む人って甘いの嫌いなのかと思ってました」
「うーん、好んでは飲まないですけど。疲れた時とかはとびきり甘いのとか飲みたくなるかな」
なるほどと納得したように沖くんは頷いた。
それから、私の方を向いて口を開く。