cafe レイン
「そんなことないですよ」
優しく微笑む彼に、沖くんがサンドウィッチを手にしながら尋ねた。
沖くんは流石男の子というべきか、私がまだ半分しか食べていないのに対して、手に持っているサンドウィッチで完食だ。
「オーナーさんは彼女とかいないんですか?」
「ちょっと沖くん!? な、何聞いているの!?」
頬いっぱいにサンドウィッチを含み平らげると、ジュースを流し込む。
それから、ゴクリと飲み込んだ沖くんは私を見るとへらっと笑った。
「だって、気になるじゃないですか」
「だからって沖くん、初対面の人でしょ」
「あはは、いいですよ。気にしてませんから。それに残念ながら長いこと彼女はいませんね」
サラリと言って微笑んだオーナーは、沖くんの空いたお皿を下げる。
「ええ、そうなんですか。モテそうなんだけどなあ」
「それも残念ながらさっぱりですよ。俺の周りはむさ苦しい男だらけです」
「なんか意外ですね。まあでも、モテても彼女が出来るかっていったら別問題ですしね、はあ」
頷きながら沖くんは大きな溜め息をつく。
自分のことを言っているのだろう。飲みの席でのことを思い出す。
「女性の気持ちは繊細すぎて、理解するのは難しいですから仕方ないです」
オーナーは目を伏せながら、ぽつりと呟く。それからふっと笑うと顔をあげる。