cafe レイン

私にはしっかりと営業スマイル見せていたし。声までは誤魔化せていなかったけれど。
不機嫌になった理由ならわかっている。


顔も知らない女性。花さん。
なんとなく、彼が花さんを好きなんだろうなってのは想像ついていた。

だけど、その花さんには彼氏がいて報われない恋をしているってことも。


全て、あの望って男の人の声が大きいからだ。
決して盗み聞きしているわけじゃないんだけど、勝手に聞こえて来るんだ。


はあと小さく溜め息をつく。
最初は隠れ家的なカフェを見つけたと思って、喜んでいた。
職場の子も来ないし、一人で落ち着けるし、なにより雰囲気がいい。

更に食事も美味しいとなれば文句なしだ。

通い始めたのはそんな理由だった。


オーナーが気になり始めたのは、通って一週間程経った雨の日のことだ。
秋から冬にかけての季節の変わり目ということもあり、私は風邪を引いていた。


いつも私以外に数人いるのに、その日は珍しく私だけだった。
マスクをしていた私は軽く咳をしながら、オーナーにいつものランチを頼んだ。

数分して運ばれたサンドウィッチとスープ。そして、アメリカンコーヒー。
その日のスープは生姜の香りが漂っていて、風邪を引いている私にはすごく有難いと思った。

サンドウィッチを美味しく食べていると、女性二人が店内へと入って来てテーブル席へと座った。
それから、注文を取りに来たオーナーに今日のランチメニューは何かを尋ねていた。

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