cafe レイン
「つっかれた。まだ午後もある。今日は終わったら即帰って即寝よう」
隣で机の上に突っ伏している律ちゃんは、疲れた声を出す。余程二日酔いが酷かったのだろう。
「大丈夫? 無理しなくていいよ、レイン行く?」
辛そうな律ちゃんにそう声をかけるが、すぐにガバっと起き上がると私の方を向いて「行く」と答えた。
それから
「ホットケーキ食べたら治る」
と続けて。
ホットケーキ食べたら治るってどういう症状だろう。と首を傾げながらも、突っ込むだけ無駄だなと私は財布と携帯を手にして律ちゃんと共に会社を後にした。
今日も私はcafeレインの扉を開ける。それと同時にカランっとベルの音が鳴る。
いつも通りカウンターに立っている丸山さん。その姿を見て笑顔になりかけた私の目に映ったのは、丸山さんと親しげに話す一人の女性だった。
その女性は丸山さんの目の前に座っていた。
丸山さんは私に気付くと、「いらっしゃいませ」と微笑みながら声をかける。私は動揺を悟られない様に笑顔を貼りつけながら、カウンターでなくテーブル席へと向かった。
カウンターにいる女性の隣に座る勇気はさすがにない。
すぐにお冷とメニューを持ってきてくれる丸山さん。
「小野寺さんいらっしゃい。今日もいつもので大丈夫ですか?」
「あ、はい。ありがとうございます……」
今日も名前で呼ばれたことに嬉しさを感じてしまう自分が憎い。それどころじゃないのに。