cafe レイン


「お友達さんはどうしますか」


丸山さんは伝票にオーダーをメモしながら、律ちゃんの方へと声をかけた。


「ホットケーキと、ホットコーヒーでお願いします」

「ホットケーキとホットコーヒーですね、かしこまりました。少々お待ち下さいませ」


小さく会釈をすると、彼はカウンターへと戻っていく。
その時、カウンターに座っていた女性が口を開いた。


「ねえ、拓。ここ、ホットケーキとかあるの?」

「はあ、盗み聞きするな」

「拓の声、通るし大きいんだもん。仕方ないじゃん。ねね、私も食べたい。ホットケーキ」

「サンドウィッチ食べただろ。そんな食べると太るぞ。花」


聞こえてきた会話に、私は心臓が飛び出るんじゃないかと思った。

〝花″

聞いたことのある名前。丸山さんの好きな人であろう女性。


固まっている私に律ちゃんは少し前かがみになると、心配そうな顔で話しかけてくる。


「楓……、大丈夫?」

「うん、大丈夫」

「あれってさ」

「……うん、そうだと思う」


飲みに行った時楓には言っていたから、すぐにピンと来たらしい。
今まで通っていたけど、あそこまで親しそうに話す女性に出会ったことはない。

それに、丸山さんは確かに花と言っていた。
これは私の聞き間違いではないと思う。
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