cafe レイン
「今日はハムとチーズのサンドウィッチに、ミネストローネですよ」
それに私の手が止まった。
え。ミネストローネ?
私は食べているランチへと視線を落とす。
確かに、ハムとチーズのサンドウィッチだけど、ミネストローネじゃなくて生姜が入ったコンソメスープだ。
……もしかして、風邪を引いている私の為に出してくれたの?
その優しさが嬉しくて、このスープが尚更美味しく感じた。
「お疲れ様です。また隠れ家に行ってたんですか?」
職場に戻り、自分の机に座るとすぐに声をかけてきたのは後輩の沖くんだ。
「うん。そうだよ」
「ええ、そんな毎日のように行ってるとか、かなり美味しいんじゃないんですか? 今度教えてくださいよ」
「うーん、やっぱり秘密」
「ぐうう……」
私がそのカフェを知ったのは、本当に偶然だった。
ここの周りはカフェや、定食屋などで溢れている。
だから、いつも行き慣れたお店から選ぶのだが、そこにはどうしても会社の人がいる。
よく話す同期の律ちゃんこと、大石律(おおいしりつ)はお弁当を持参しているから、昼は一人で外に出ることが多かった。
私もお弁当を作ろうかと思ったけど、外には安くて美味しいランチを食べる場所がたくさんある。
朝早く起きて準備することや、手間暇かけることを考えた時に、外にランチに行くが勝利した。
それにお弁当を作ったとしても、きっと冷凍食品まみれになってしまうだろう。
休みの日にまとめて作ったりとかする気にはなれなかった。
休みはちゃんと休みたい。