cafe レイン
映画と定食屋


花さんと初めて遭遇したその日の午後はボロボロだった。
集中しようにも全く身が入らず、すぐにキーボードを叩く手が止まってしまう。

仕事は仕事。そう切り替えられたらいいのに、中々切り替えがうまくいかない。
律ちゃんが心配して声をかけてくれるけど、私は大丈夫だと笑顔を見せた。こんなことで心配掛けるなんて情けない。

結局、全く仕事が捗らず私は残業することにした。律ちゃんが残るって何度も言ってくれたけど、それをどうにか諭して帰した。


それから今日の分の打ちこみが終わったのは、三時間後だった。
何度もミスがないかを確認して、メールを人事部に送信する。
送信ボタンを押した後、私は安堵のため息を漏らした。よかった、終わった。終わらなかったらどうしようかと思った。


安心したからか、きゅるると小さくお腹が鳴って空腹な事に気付く。
何食べようかな。久々にラーメンでも食べようかな。

昼休憩の時は時間がなくて並べないけれど、今なら並ぶ事も出来る。
そう思ったらもうラーメンが恋しくて仕方がなくなったから、急いで帰る準備をして会社を後にした。


久しぶりに訪れたラーメン屋さんはやっぱり今日も混んでいた。昼夜関係なく混んでいて感心してしまう。
昼よりか並んでいる人数が少ない。これなら待ったとしても二十分もかからないだろう。


最後尾に並ぶと、私は何を食べようか思案を巡らす。大盛り、にんにく増し増し、餃子までつけちゃおうかな。
この後誰にも会わないってハッピーだ。匂いとか気にしなくていい。


やっぱりここのラーメン屋は人気だ。私が並んですぐに隣に人が来た。


「あれ」


横でそんな声がする。私は何かと思って少しだけ視線を上げるが、その人物を見て目を真ん丸に見開いた。
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