cafe レイン
「ここ、俺よく来るんですけど小野寺さんもですか?」
「最近はめっきりです。実は、レインに通う前は結構常連だったんです、ここ」
「え、そうだったんですか」
ポケットに手を突っ込んでいる彼は驚いた顔をしながら、私を見る。
私は頷きながら続けた。
「でも、ここテレビで放送されてから毎日凄い行列で、休憩時間じゃ間に合いそうにないので、他探していたら丸山さんのお店見つけたんです」
そこまで話し終えた私が丸山さんを見上げると、彼はすぐに優しい笑顔を見せて
「それは、俺にとってめっちゃラッキーだな」
と、言った。
ラッキー? 言っている意味がわからなくて、首を捻ると彼が続けた。
「そこから俺の店に通ってくれるようになったんだから。ここのラーメン美味しいからそこはちょっと惜しいけどね。
それでも、俺の店のサンドウィッチをいつも美味しそうに食べてくれる小野寺さんの顔を見ていると、お店開いて良かったなって思うんですよね」
「……」
言葉にならなかった。純粋に美味しいからっていうのもあるけれど、途中から丸山さんに会いたいっていう不純な動機もあったというのに。
彼がそんな風に感じてくれているだなんて。私が通い続けていることが、彼にとって仕事を続けるモチベーションだったのなら凄く嬉しい。
答えられずに黙っていると、慌てた様子で丸山さんが口を開く。
「あっ、そんな重く考えないでくださいね? これからも通い続けろって意味じゃなくて」
必死にフォローするように言う丸山さんがおかしくて、私は思わず吹き出した。