cafe レイン
翌日、出社した私は上機嫌だった。
たぶん漫画とかなら花が周りを散っているに違いない。
ルンルンっとしていると、沖くんが話しかけてくる。
「おはようございます。やけにご機嫌ですね。いいことでもあったんですか」
「沖くん。おはよう。わかる?」
「はい、ずっと口元緩んでますよ。昨日はあんなに死にそうだったのに。大石さんだってめっちゃ心配していたんですから」
「え」
そうだ。律ちゃんに言うのを忘れていた。昨日あんなに心配かけたのに。
連絡しようとケイタイを取り出そうとしたら張本人がやってきて、すぐさま私の元へと駆け寄ってきた。
「楓、平気? 今日も私ついていく?」
「あ、律ちゃん。えっと、その」
「ん? どうした」
心配そうに眉を下げる律ちゃんに私は申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、おずおずと告げる。
「あの、ね。実は連絡先を交換したの」
「え」
「え」
その発言には沖くんまで目を点にしていた。
眉間に皺を寄せながら、律ちゃんが尋ねる。
「誰と?」
「私と」
「誰が?」
「……丸山さん」
「…………は」
意味がわかっていないようで、律ちゃんは口をぽかんと開けている。
そりゃそうだ。私は昨日お通夜モードのまま残業していた。それしか二人は知らないのだ。