cafe レイン

今日のランチの場所はもちろんcafeレイン。行き慣れた場所。
カランっと鐘の音を鳴らしながら扉を開ける。すぐに目に入る丸山さん。―――と、花さんの姿。

丸山さんは私に気付くと、「いらっしゃい」と言いながら手招きをした。
私は張りつけた様な笑顔を見せながら、拒否する事も出来ず近付く。


「カウンターどうぞ」

「え、あ、いいんですか」


そう言ってからチラリと花さんの様子を窺う。すると、それに気付いた丸山さんが花さんに声をかけた。

「おい、花。お客さん来たから帰れ。邪魔だ」

「ええっ、ひどっ」


ぶーぶー言う彼女を無視しながら彼が後ろの棚からカップを手にとってコーヒーを淹れる。
そして、私の前へと差し出した。


「はあ、わかったよ。帰る。後で家でね」


「ん」と一言だけ返すと彼女の方を見ずに彼はひらひらと手を振った。
カランと扉の開く音がして彼女がいなくなる。
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